秋のG1戦線が始まりました。
その初戦を飾るのは、瞬きするら許されない『電撃の6ハロン』こと中山1200m芝 スプリンターズステークスです。
スプリンターには、春の高松宮記念とこのスプリンターズステークスの2つしか国内では目標といえるものはありません。
この戦いを勝つかどうかは天と地ほどに差があるのです。
そのような戦いの場ですから、ここにやってくるメンバーはみな是が非でもここで勝ちたい馬たちで、何度も何度もこの短距離の世界でぶつかりあってきた馬たちです。
それゆえに、相手の戦い方や力量、強みと弱みなどもお互いに熟知している中での戦いとなります。
そんな中に彼らはいました。
かつてはクラシックの初戦皐月賞で2000mという距離でも善戦し、年齢を重ねてこの短距離の世界に適性を見出したウインカーネリアン。
そしてその手綱を持つ三浦皇成騎手です。
かつて三浦騎手は、数々の記録を打ち立て自分の立てた記録を更新し続けるレジェンド武豊騎手の持っていた新人最多勝利を塗り替えた逸材でした。
しかし、その後いろんなことがあって、いろんなことがありG1を勝つことができずにいます。
有力馬を回してもらえる騎手という立場でもなく、最近はもうこのままG1を勝つことができずに終わるのかとも思われていたところがありました。
ですが、ですがね、競馬の神様っていうのは、どうやらまーた筆が乗ってたみたいたんですわ。
このウインカーネリアンという馬、戦績を見るとデビューからなかなか勝てずに三浦騎手に乗り替わってから初勝利を挙げています。
しかし、そこから三浦騎手でという事にもならず、別の騎手が乗って中々勝ちきれず、また三浦騎手が乗って勝利を挙げるという事を繰り返し、コンビが確定したのはデビューしてから2年後の2022年、このころはまだマイルあたりを走ってました。
ここでオープンクラスのリステッドという各付けでいうとG1>>>G2>G3>>リステッド こんな感じになるレースを連勝し、G3の関屋記念で重賞初制覇をしてからこのコンビはずっとこのままです。
そこから3年間、23年の東京新聞杯を勝っているんですが悲願のG1勝利にはたどり着けず、海外のG1で本当にあとちょっとの2着に食い込むなど惜しい競馬を繰り返していました。
そんな馬が今回のスプリンターズステークスではロスの大きい一番外の枠に入ったりして、これはだいぶ分が悪いなと思っていました。
もし、あるとしたら大外から勢いよくスタートダッシュを決めて、短距離といえどこれについていったら最後にばてちゃうなっていう風に他の騎手が考えて控えてくれて、だけど実はウインカーネリアン的には結構楽に走ってるんですよ。
みたいな俗に言う楽逃げのパターンを引けたらワンチャンあるかなぁくらいにしか思ってなかったです。
そしてそれが起きたんですよ。
武豊騎手騎乗のジューンブレアとウインカーネリアンは素晴らしいスタートで外側から前を取りました。
ここでウインカーネリアンが外に入った不幸が幸運に変わっています。
外から斜めに内側に走っていくため、スタートの勢いが同じくらいだと必然的に内側の馬が前に行くことになり、隊列を引っ張っていく役割を背負うことになります。
差のない2番手につけたので、ウインカーネリアンはジューンブレアにペースを作ってもらいつつ、ジューンブレアに圧をかけられる絶好のポジションになりました。
さらに、本来このパターンでウインカーネリアンたちの後ろにつけると思われていた馬たちのスタートがうまくいかず、本来受けると思われていた後ろからの圧をウインカーネリアンは受けずに済みました。
そして、武豊騎手が逃げを打ったことにより、仕掛けていけば返り討ちに合うかも・・・という迷いがほかの騎手に生まれ慎重になったりしたんだと思います。
最終コーナーを曲がり切って最後の直線に入ったころにはもう、このスプリンターズステークスの勝者は、ウインカーネリアンかジューンブレアのどちらかに決まったようなものでした。
武豊騎手はG1処理数でぶっちぎりの記録を持っており、それを毎年更新するような恐るべきレジェンドです。
対する三浦騎手は再度書きますがG1を勝っていません。
最後の直線はその二人の戦いとなったわけですよ。
ウインカーネリアンだってもう8歳、人間で言えば40後半~50前半くらいなもんです。
そんな馬が、競走馬としての最盛期といわれる4歳の馬と競り合ってるわけですよ。
ずっと勝ち続けてきたわけでもなく、地道に1つ1つ積み重ねて他より時間はかかったけどここまでやってきた馬がそこを走っているわけですよ。
競馬っていうのはね、たまにあるんですよ。
そいつにそれを勝たせるだけにこの世に生を受けたんじゃないかって思えるような馬が・・・ね。
戦いは終わり、勝者と敗者が決まりました。
天高くこぶしを上げ、万雷の拍手に包まれたのはウインカーネリアンと三浦皇成騎手。
競馬の民である我々がいつか見たいと思っていた景色です。
馬券を当てた人も外れた人も、一緒になって喜びを爆発させていました。
G1ジョッキーになる前の三浦騎手がもういないのは少し寂しいですが、みんなが待っていたG1ジョッキー三浦皇成のこれからの活躍に期待していきたいと思います。