book review
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中国とどう付き合うか (NHKブックス)天児 慧
…電車の中では広げにくいタイトルの本である。
最近では、尖閣諸島問題や、ノーベル平和賞をめぐる人権問題等、中国の独り善
がり主義がいっそう目立ってきた。しかし、日本経済の中国市場への依存度が強
まっている以上、中国を無視し相手にしないわけにもいくまい。
日中問題を取り上げている書籍や報道はネガティブなものが多い中で、本書は、
肥大化する中国とどう付き合うのか、どう平和・強調的な国際的枠組み、地域的
枠組みを日中双方で作り上げていくのか、この問題のほうが重要であるとし、
「歴史問題の桎桔」を絶ち、冷静さの中にも信頼感を共有した
未来の新しい日中関係を築く今がチャンスだとしており、理性的で前向きなスタ
ンスで日中関係の構築を探っている。
大学院教授である著者のゼミでの、日本人学生と中国人学生との交流の様子など、
政府レベルではなく、個人レベルでの相互理解への取り組みが多く紹介されてい
る。難問を諦めない努力には心打たれるものがあった。
相互理解のためには、たとえ誤るとしてもその誤りを最小に抑えるためには、ど
うしたら良いのか。中国問題に限らず、アジア研究は、常に時代と環境に拘束さ
れてきた。おそらく今後もそれは変わらない。ただその事を自覚した上で、外部
からのものさしを持ち込まず、可能な限り、その地域の、内側からのかすかな声
に耳を済ませていくことが大切だと感じさせられる。