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書評「氏名の誕生」その1

以下の書籍に関する書評となります。
氏名の誕生 ――江戸時代の名前はなぜ消えたのか (ちくま新書) 尾脇秀和 (著)

ドラえもんの「えもん」て何だろう?

「えもん」は石川五右衛門、近松門左衛門の「衛門」じゃないかと。
諸説あり、dream onのアナグラムだという説もあるが、直接の由来ではなくても、「えもん」という響きの大元は「衛門」から来ている可能性が高い。

では、「衛門」って何かというと、奈良・平安時代の律令(中国の刑法・法律を直輸入した法体系)に定義されている衛門府という、都城の門を警護する官司のこと。現代で言えば、国会議事堂の前にいる警察官みたいな役目になる。
律令の官職は四等官といって、上官から順に四つの等級に分けられる。現代で言えば社長・部長・課長・平社員みたいな感じで、高校の歴史の授業で習ったかみ・すけ・じょう・さかんというヤツ(官職によって、当てる漢字が変わるが、衛門府の場合は督・佐・大尉(少尉)・大志(少志)となる。

ここまでは「衛門」に関する基礎知識で、昔(実は明治の初めぐらいまで)は、本名を諱(いみな)といって直接口にしない、文字にしない習慣があったので名前の代わりに官職などを付けて呼んでいた。

例:織田信長→織田上総介

例えば鈴木イチロウさんという方が居て、この人が衛門府の長(かみ)だった場合は、鈴木イチロウさんじゃなく、鈴木衛門督(えもんのかみ)と呼ぶ。

元々の律令制度では、衛門府というのは実際に門番の役目を伴っていたが、割と早い時代(たぶん平安時代中)に実務が廃れて、肩書きだけの名誉職となっていく。

次回に続く