スプリンターズステークス
秋のG1戦線がスタートし、その初戦となるのが電撃の六ハロン(1200m)中山競馬場で開催されるスプリンターズステークスです。
過去にはサクラバクシンオーが絶対的な強さを示し、その競争生活に幕を下ろした舞台であります。
ここ数年、スプリント界はG1の勝者が目まぐるしく変わっており絶対的な王者が存在しません。
今回は海外から参戦する馬も居て、どの馬にもチャンスがある横一線の勝負だったと思います。
そんな中に、ルガルという馬がいました。
去年の終わりごろはその素質は見せていましたが、大きな舞台で勝ちきれない馬という印象でした。
しかし、今年に入りついに重傷を制覇。春のスプリント王者決定戦となる高松宮記念では堂々の1番人気に押されています。
その背に跨るのは、2018年3月にデビューし7年目となる西村敦也騎手。
その年にデビューした騎手は3人だけでした。
そのうちの一人はケガで、もう一人は成績が伸びず引退しています。
たった3人しかいない新人騎手という事で注目し応援してきました。
良い馬が回ってこない時代でもコツコツとローカル(特に小倉)で勝ち星を稼ぎ、少しずつですが周囲の信頼と評価を得ていったのだと思います。
そういった姿勢が、次第に重賞レースでの手綱を任されることにつながりルガルとの出会いをもたらしたのだと思います。
そしてルガルですが、1番人気に押された高松宮記念ではレース中に故障してしまい、期待を裏切る結果となってしまい、陣営としても悔しい結果となっていました。
無事に復帰することができましたが、復帰戦がスプリンターズステークスとなって果たして力を出し切れるのか…とみんなが思っていたと思います。
誰が見ても調教は素晴らしく、これがレースで発揮できればという事もみんな分かっていたでしょう。
しかし、どのようなスポーツであってもその実力をすべて発揮するという事は難しいことも皆が知っていることなのです。
そして、不利な外枠を引いてしまい展開も厳しいように思われました。
実際のレース動画はJRAがyoutubeにアップしていると思うのでそちらを見ていただきたいのですが、ルガルは抜群のスタートを決めます。
しかし、逃げ馬が抑えられず大暴走するペースを追う形となってしまいます。
ルガルの手綱を握る西村騎手は勇気をもってルガルの力を信じ先頭を追いかけます。
そこに迷いはないような騎乗でした。
一方、後方ではスタートが決まらなかった馬も発生し多少隊列がごちゃついていましたが、ハイペースな前の馬を無理に追いかけず、自分たちの競馬に徹していたように思います。
最終コーナーを抜けるあたりで仕掛けた西村騎手に応えたルガルは、ハイペースを追走したとは思えないような力強い足取りで中山の激坂を駆け上がると先頭に立ちました。
しかし、この時を待っていたとばかりに後方の馬が詰め寄ってきます。
一歩、また一歩とルガルへと迫る馬たち。
ですが、最後まで西村騎手の手綱に応えたルガルは己の速さを強さを、海を渡ってきた強者に、ともにしのぎを削ってきたライバルたちに、そして私たちに見せつけて先頭でゴールを駆け抜けたのです。
人馬ともに初のG1優勝となる素晴らしいレースでした。
おめでとうルガル。
おめでとう西村君。
君たちの栄光の瞬間に単勝馬券を握りしめていたことを誇りに思う。