株式会社タフス

赤いキー

同居人が突然姿を消して、今日で3日目になる。 凄腕のプログラマーだった彼が残した最後のメッセージは、「ようやく『入れ替わり』のショートカットキーが完成した」という謎の一文だけだった。

手がかりを探そうと彼のデスクに向かった私は、見慣れたキーボードに違和感を覚えた。右上に見知らぬ赤いキーが一つ増えているのだ。印字はなく、指を近づけると微かに生温かい。横には彼の筆跡で「絶対に押さないで」と書かれた付箋が貼られていた。

普段なら他人の忠告は守る方だ。しかし、同居人の行方が気がかりだったことと、禁止されるほど触れたくなる人間の性が、私の震える指を動かした。

「カチッ」ではなく、「ニュルッ」という不気味な感触。 その瞬間、パソコンのモニターが真っ暗になり、画面に「Data Transfer Complete(データ転送完了)」という文字が浮かび上がった。

ふと、自分の体が全く動かないことに気がついた。視界が異様に平面的になり、目の前には分厚いガラスのような壁がある。

ガチャリ、と部屋のドアが開き、消えていたはずの同居人が入ってきた。

彼は「私」の真正面に座り、ガラス越しにこちらを見つめて、にやりと笑った。 「あぁ、やっぱり現実世界の肉体は最高だな。忠告、無視してくれてありがとう」

彼が完成させたという『入れ替わり』の意味にようやく気づき、私は悲鳴を上げようとした。しかし、モニターの中に閉じ込められた私には、もう声を出すための口すら存在しなかった。

1/9のエントリを元に、ホラー要素と伏線回収要素を追加してもらった。ますますなんのこっちゃ